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TECH COLUMN

チタンの資源および生産

Titanium Resources and Production

WRITNG

チタンのClarke Numberは多い方から第9番目の0.46%であり, 有用金属ではアルミニウム, 鉄, マグネシウムに次いで多く地殻に存在する元素である。チタンの資源は品位と産出形態をあわせて考えることが必要である。鉱石はTi含有量の多いルチル, Rutile (TiO2単体)及びイルメナイト, Ilumenite (TiとFeの複合酸化物) が主なもので現在開発されている鉱区の推定埋蔵量は計約100億トンで資源は豊富である。アメリカ, カナダ, ロシアおよびノルウエーでは塊状型鉱床としてイルメナイトが多く, インド, オーストラリアおよび日本では漂砂型鉱床が多い。日本ではルチルはほとんど産出せず, イルメナイトよりも若干低品位で鉄分の多い黒砂 (Black Sand TiO2; 34~37%)が約7億トンと推定されている。製品コストおよび作業能率を考慮すれば低品位の国産鉱石 の利用には限度がありTiO2; 55%程度の高品位の輸入原料と混合して使用した方が経済的とされている。Ti製品の主なものは金属チタンおよびチタン白として知られる酸化チタンである。金属チタン(スポンジチタン)の生産国としてわが国はアメリカ, ロシアに次いで世界第3位の生産実績を持ち年産約18,200トン(2017)で大部分を輸出し, その品質はアメリカおよびロシアのものよりも優れている。

金属チタン

チタンスポンジの製錬日本におけるチタンの工業生産5)はKroll法として知られる四塩化チタンのマグネシウム還元に依っている。 TiCl4+2Mg→Ti+2MgCl2…(1) わが国ではナトリウム還元法や電解法も実験室的には成功しているが, 工業生産に移るためにはなお操業単位の大型化や連続操業などの技術 の開発が必要で, 前記のKroll法と品質およびコストの面から比較検討しながら開発研究が進められている模様である6)。これらの詳細は企業秘密として発表は殆どなされていない現状である。Kroll法 によるチタンスポンジの工業生産5)のフローシートは図1に示したようで, 還元および分離はBatch反応により操業されていて, わが国では約1.4トンの大型のチタン塊 (ケーキ) が作られている。これらの主要な反応操作は高温度であるため全て空気を遮断して行なうことが必要であるので, 写真1に見られるような鋼製の気密容器を用い, 真空ポンプにより一たん排気しのちにアルゴン雰囲気とす る。この容器内にあらかじめ入れておいた還元剤であるマグネシウム (約2トン)を加熱溶解する。(1)式の反応は約960℃で行ない, このため必要な四塩化チタン(TiCl4)約5.7トンを徐々に容器内に滴下し, 1.4トンのチタンスポンジを得る。全ての反応が終了したのち反応生成物のMgCl2および未反応のMgなどを除くため気密容器を倒立し, 1000℃に加熱して大部分のMgCl2などを液相で分離し, さらになお残留するものを真空蒸留により完全に除去する。これら一連の操業には3~4日間を要す。TMCA社(アメリカ)などではMgCl2を水溶液として抽出する方法(Leaching)も行成っているが, 前 述の真空分離法による方がスポンジの品位がよい。

チタンの品位とその精製

チタンの乾式精製に際し, ニオブ, タンタルおよびジルコニウムなど他のRefractory metalsと異なる点は, 高真空中での高温加熱処理または電子ビーム溶解 (E.B.M.)によっても不純分としての酸素の除去ができない事である。これはチタンの酸化物の蒸気圧が金属のそれとほぼ同一であるためである7)。 現在では沃度法による精製でえられる沃度法チタン(Iodide titaniumまたはCrystal bar)は最高の品位とされている1),8)。主な不純分は表2の中程に示す。これは四沃化チタンの熱分解反応利用するもので, 高純度の気相として運ばれTiI4が高温 (1450℃)のチタン製フィラメントにふれて熱分解 を起し, Ti I4⇔Ti+2I2…(2)により純チタンを得る。分解した沃度(気相)は低温部(約200℃)の原料チタンと反応して(2)の逆反応により再びTi I4 (気相)を作り, フィラメント上にTiを運び, 巡環する。本法は量産ができず, 製造コストも高いため, 研究資材の域に留まっている。また電解法による精製の研究も行なわれているが, 実用化には至っていない。Kroll法によるチタンスポンジの品位は1.4トンのように大型のスポンジケーキの場合には外周部より中央部の方が品位が高い事が知られている9)5)。これは原 料中に含まれる不純分の挙動が全体の反応時期を通じて異なるためで, 反応初期に生成 した外側の部分の金属に不純分が多く含まれるものが多い。したがつてバッチ生産のスポンジケーキの中央部から常に安定した高品位のチタンスポンジがかなり多量に得られる事は理解されよう。表2の中にKroll法の中央部より得られた高品位の部分の純度 を示す。しかし工業的には必要以上に純度の高いスポンジチタンは不必要で, むしろコストが重要であるため, 現在日本工業標準規格21)には表2の様に決められている。

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